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山元先生の仕事に対する誤解の連鎖反応 

山元先生の仕事に対する誤解の連鎖反応


杏野先生のブログのコメント欄に,私が傍若無人なコメントをつけました。予想通り,誰もレスをつけなかったけど,少し加筆・修正して自分のブログに転載します。
http://d.hatena.ne.jp/annojo/20120608


2012/06/08 20:58>次はぜひ哺乳類での研究をお願いしたいです。


:これは無理と思います。研究者は要望でなく,様々の制約のもと,研究対象を選びますから。
東北大学の山元先生のHPを引用してみましょう。
http://www.bsc.tohoku.ac.jp/contents/c2_32/c2_32_yamamoto_d.html
「私たちは遺伝的にきっちりと決まったパターンをもつ性行動に着目し、遺伝子の突然変異を容易に作り出すことが出来るキイロショウジョウバエを材料に選んで、行動制御遺伝子とそれが作りだす神経回路の実体を解明することに取り組んでいます。

私たちは雄が同性愛行動をとるように変化した突然変異体の作成に成功し、これをsatoriと命名しました。続いてsatori系統で変異を起こしているのがfruitlessという遺伝子であり、この遺伝子が脳の細胞の性を決定する役目を担っていることを、遺伝子クローニングによって明らかにしました」。

単なるショウジョウバエではなく,キイロショウジョウバエでないと,いけないのですから,簡単に哺乳類の研究と言う訳にいきません。


>ちなみにショウジョウバエよりはウニやギボシムシの方が人間に近い生き物です。

:これは,後2者はヒトと同じく後口動物で,ハエは先口動物である事から,系統樹上,言われたことです。
今,分子生物学や,蛋白,rRNA,レベルで次々と新しい系統樹が提唱されています。
http://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2004/post_000005.html
今は遺伝子レベルで沢山の相同遺伝子がハエとヒトとに見つかり,ハエには複眼と神経系があり,中枢神経系の進化の点でも興味深いです。
http://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2006/post_000003.html

ハエとウニはDNAの解読がすんでいますが,ギボシムシはまだです。ギボシムシは先口動物の進化を考える上で重要ですがマイナーな生物で,採集することさえ難しいのです。
どちらが系統樹的にヒトに近いは,分子生物学の方が重要な今あまり意味があるとは思えません。ヒトとハエに沢山相同遺伝子があり,その遺伝子産物・機能がかなり解明されているという事が,研究上重要な事です。

ちなみに,遺伝子数はヒトが,約22,000,マウスが24000,ニワトリが18000,ショウジョウバエが13,800,ウニが23000です。


>ひろこ 2012/06/09 09:07
日本語訳を読んだだけですけど、男女の二極性を持つのは、神経そのものなんでしょうか、それとも、神経網なんでしょうか。記事を読む限りでは、神経の性質に男女の二極性をがある (作られる) ように思えるんですけど…

:彼女が直感的には,1番正しくて,神経細胞にオス・メスがあるのです。

上述の山元先生のページを引用すると,http://www.bsc.tohoku.ac.jp/contents/c2_32/c2_32_yamamoto_d.html
「fruitless遺伝子の場合は、雄になる予定のハエだけでそのタンパク質が作られます。Fruitlessタンパク質が作られるとその細胞は雄として発生する運命をたどるのです。Fruitlessタンパク質を持たない細胞は、雌の性質を獲得します。

fruitless遺伝子が働いているのは、10万個以上ある神経細胞のうちの2000個程度です。これらを「fruitless発現細胞(mAL)」と呼びます。fruitless発現細胞を一つずつ脳の中に染め出して雌雄で形を比較してみたところ、もともとは同じ細胞であったものが、成虫になるとはっきりと違った形になるものがあることがわかりました。つまり、一個一個の脳細胞に性差があるのです。この性差によって本来同じだった脳細胞が、雌雄で違った情報を受け取るようになり、違った情報処理をして、最終的には行動の性差を生み出すと考えられるわけです。
こうした性差を示すfruitless発現細胞を人工的に興奮させると、その雄は雌がいなくても性行動を始めます。また、雌のfruitless発現細胞を雄に性転換すると、雌でありながら雄の性行動をするようになります。

このように、一個の遺伝子の操作によって、また一個あるいは数個の脳細胞の操作によって、ハエの性行動をコントロールすることに成功しました。種ごとに違った性行動のパターンも、このfruitless遺伝子の違いによって説明できるのではないかと考えて、さらに研究を進めています。ショウジョウバエの性行動には驚くべき多様性があります。たとえばハワイ島にしかいないDrosophila heteroneuraという種の雄は、まるで有蹄類のようにレック(生殖のための縄張り)を作って互いに争いますが、こうした特異な行動も、あるいはfruitlessのような遺伝子の変化によって生まれたのかもしれません。行動の進化の謎解きはまさにこれから始まろうとしています。」

これで,充分な説明になっているのですが,このページは古いのです。その証拠は,引用文献が2010年1月までしかありません。
その後,4つの論文を出しています。

1.Fruitless Recruits Two Antagonistic Chromatin Factors to Establish Single-Neuron Sexual Dimorphism
Ito H, Sato K, Koganezawa M, Ote M, Matsumoto K, Hama C, Yamamoto D.
Cell. 2012 Jun 8;149(6):1327-38.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22682252

2.Sexually dimorphic shaping of interneuron dendrites involves the hunchback transcription factor.
Goto J, Mikawa Y, Koganezawa M, Ito H, Yamamoto D.
J Neurosci. 2011 Apr 6;31(14):5454-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471381
http://www.jneurosci.org/content/31/14/5454.full.pdf

3.Neuronal synaptic outputs determine the sexual fate of postsynaptic targets.
Nojima T, Kimura K, Koganezawa M, Yamamoto D.
Curr Biol. 2010 May 11;20(9):836-40. Epub 2010 Apr 15.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20399094

4.Female contact activates male-specific interneurons that trigger stereotypic courtship behavior in Drosophila.
Kohatsu S, Koganezawa M, Yamamoto D.
Neuron. 2011 Feb 10;69(3):498-508.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20399094


annojo 2012/06/09 09:52
リンク先の図版からは、求愛行動をとるオス型では、Hみたいな形の神経網で、とらないメス型は、Xみたいな形の神経網という違いがあるようです。
annojo 2012/06/09 13:00
山元先生のサイトに、神経網の違いの写真がありましたのではっときます。
http://www.bsc.tohoku.ac.jp/img/c2_32/c2_32_yamamoto_d2.jpg

:杏野先生は,自分で要約を訳したのに,単一神経細胞レベルで,オス・メスが決まり,それから神経網が決まると言う事を誤解しました。
従って,後の人は同じ誤解を続けます。
杏野先生の神経細胞網は貼ったのは,生体内なので少し違います。


独り言 2012/06/12 23:45
ハエではオスとメスで神経網の形が異なること、その形成に様々な転写因子が関わっている事は何となくわかったが、
神経網の違いが脳の雄性や雌性の原因なのか結果なのか、オスとメスの神経細胞の違いが神経網に反映されているのか、神経細胞はオスとメスで同じだが、それが形成する回路や並び方に違いがあるのか、ブラックボックスの中心はまだまだ明らかになっていないような。。興味はつきませんね。

:これは,正確に言うと,単一神経細胞レベルで,フルーツレス遺伝子とBonが結合し,さらにHP1aが働いて,まずメス型の神経細胞,あるいはHDAC1が働いてオス型の神経細胞を作ります。それが論文で単一神経細胞のレベルでとしつこく書いてある理由です。実際の実験は,mALの神経芽細胞クローンの培養で行なわれました。その培養細胞のクラスターが,勝手にメス型やオス型になったようです。図5で単一細胞クローンと書いてあるものです。
http://www.bsc.tohoku.ac.jp/contents/c2_32/c2_32_yamamoto_d.html

:「神経細胞はオスとメスで同じだが、それが形成する回路や並び方に違いがあるのか、ブラックボックスの中心はまだまだ明らかになっていないような」 これは神経細胞レベルでオス・メス違うので,笑いたくなるような,誤解です。


>通りすがり 2012/06/11 23:41
先生の指摘されている通り、「神経網」の雄性化です。fruitlessがあると、神経網が雄性化します。

:前半の部分,上述のように,単一神経細胞の性分化から,神経網の性分化になります。

>ところで、本件で言われている、特定の遺伝子を欠損することで、メスには興味を示さず、オスと交尾しようとするオスのショウジョウバエがいること自体はかなり前から知られていました。
で、この突然変異のハエを最初に見つけたのも日本人の研究グループで、メスに興味を示さない事から「satori」という名前(学術上の公式名です)をハエにつけています。

:satori(sat)は,フルーツレス遺伝子の突然変異です。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC38490/?tool=pubmed
上述の山元先生のページで,
「私たちは雄が同性愛行動をとるように変化した突然変異体の作成に成功し、これをsatoriと命名しました。続いてsatori系統で変異を起こしているのがfruitlessという遺伝子であり、この遺伝子が脳の細胞の性を決定する役目を担っていることを、遺伝子クローニングによって明らかにしました」。

日本人の研究グループとは,山元先生のグループで彼が,フルーツレス遺伝子の突然変異である事を発見したのです。知ったかぶりも,ここまで来ると滑稽です。


実は,単一の神経細胞のオス・メスが決まってから,どうやって神経細胞網を作るかは山元先生のHPでは,曖昧でした。その後の論文に示唆する報告があります。


4.の論文で
 In Drosophila, a motor nerve has been implicated in the induction of the muscle of Lawrence (MOL), the formation of which is male specific and depends on the neural expression of fruitless (fru), a neural sex-determinant gene.
Here we report the identification of a single motoneuron essential for inducing the MOL, which we call the MOL-inducing (Mind) motoneuron.

2.の論文で
The fru-expressing mAL interneuron cluster is sexually dimorphic in three aspects: the number of cells composing the cluster is 5 in females and 30 in males; the ipsilateral neurite is absent in females and present in males; the contralateral neurite forms Y-shaped branches in the subesophageal ganglion in females while it ends with a simple horsetail-like structure in males.
By screens in the compound eye for modifiers of roughness induced by fru(+) overexpression, we identified a loss-of-function allele of hunchback (hb) to be a suppressor of this phenotype.


今回は杏野先生が招いた,誤解の連鎖反応でした。
彼は医師だけど,精神科医に過ぎないから,私の方が基礎生物学の知識は上だと思います。



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