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『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』,引用論文批判 

『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』


杏野先生のブログに,上記の記事が出ました。
http://d.hatena.ne.jp/annojo/20120124


竹内久美子が書いた本に基づきます。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/468


私は,次のようなコメントをしました。
azami
この本は,下記の論文を扱っているけど,同性愛が進化上,生き残った説明としては古典的なものです。PNASに載って,Natureに論説が出た位ですから。「トンでも」な論文では,ないのですけど,直感的にはまだ完全な証明にはなっていないと思います。

Camperio-Ciani Aら
Evidence for maternally inherited factors favouring male homosexuality and promoting female fecundity
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/271/1554/2217.full.pdf
http://www.nature.com/news/2004/041011/full/news041011-5.html



この論文は一応,理論的ですが,まったく信用できないと思います。


第一の問題点;これは,同性愛の遺伝子をX染色体に載っているという,Hamerの研究(1993)に依存しているのです。Xq28に存在するゲイ遺伝子として,かって広く宣伝されますが,この研究はほぼ否定されたのです(Rice1999など)。


それで,反撃する為に,Hamerのグループが,全ゲノム関連分析(GWAS)と言う大博打を初めて行いました。
A genomewide scan of male sexual orientation.
Mustanski BS, Dupree MG, Nievergelt CM, Bocklandt S, Schork NJ, Hamer DH.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15645181 2005
http://morisitaazami.blog.fc2.com/blog-entry-78.html
GWASは,10cM(モルガン)の間隔でマイクロサテライトマーカーを使って,遺伝子の縦断爆撃をするようなものです。この研究の結果は,味方への誤爆でした。つまりXq28を否定しただけでなく,母系由来の遺伝子の存在をほぼ否定してしまったのです。この論文では常染色体7番の7q32を関連陽性としていますが,mlodは低く,他のGWAS研究では,有意でない水準でした。


A genome-wide scan of male sexual orientation.
Ramagopalan SV, Dyment DA, Handunnetthi L, Rice GP, Ebers GC.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20057505   2010
http://morisitaazami.blog.fc2.com/blog-entry-75.html
これは短いletterの報告ですが,SNPを基礎にするDNAチップの関連分析スキャンは有意にマイクロサテライトマーカーよりゲノムのカバーが広範囲で得られる情報量も多いです。この技術を用いてカナダの同性愛男性のコホート研究を行いました。
そして,この論文ではどこにも関連遺伝子はなかったのです。


結局,同性愛の遺伝子は,今のところX染色体はもちろん,全ゲノムで存在せず,単一また数個の遺伝子で起きる可能性は少なく,多数の遺伝子の関与が考えれます。いわゆる複数の稀な変異と,比較的ふつうの非典型的性的指向の関連を研究すればいいのです。


第二の問題点;次の問題は,母親や女性の親族の多産(facundity)の遺伝子とは,どのようなものでしょうか?遺伝子は,DNAから,RNAとなり一部は調節RNAとして,一部は蛋白に翻訳され,酵素や,受容体,蛋白質,神経伝達物質(あるいは生成酵素やその受容体)そのものとして働きますが,それがどの様に行動に結びつくかは,全く不明です。いくら神経伝達物質や,受容体,トラスポーター遺伝子を,積み重ねても,多産や,同性愛の行動を説明できるとは,思えません。
多産というのは,母親だけでなく,父親側の関与が考えられます。ですから,母親の遺伝子だけでなく,父親の遺伝子が関与が考えられるし,2人の遺伝子の相互作用も考えられます。


従って,多産に関しても,複数の複雑な遺伝子の関与が,考えられます。
理論的には,例えば4人以上子供がいる女性と,不妊疾患がないのに子供がいない女性を,1000人づつぐらい集めて,GWASをSNPかCNVでやればいいのです。私は多産の遺伝子の存在に悲観的だけど,少子高齢化に悩む国なら研究に助成するかもしれません。


いずれにしろ,そんなに,複雑で複数の同性愛遺伝子と,多産遺伝子が,簡単に連鎖不平衡を示す訳がありません。


実は同じ筆頭著者が,2人の数学者と書いた論文があります。
Sexually Antagonistic Selection in Human Male Homosexuality
Andrea Camperio Ciani1, Paolo Cermelli, Giovanni Zanzotto
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0002282#pone-0002282-g002

こちらの方が凄い数式が載っているので,杏野先生が言っていた「この本全体の核心的な部分であるこの説の引用論文の、理論モデルについては、数式だらけのその論文は、もはや私の理解の範囲を超え、皆さんに説明することが出来ないのが残念だ」のは,こちらの論文かもしれません。ただし2008年の論文です。計算はあっているようだけど,結論は間違っていそうです。少なくとも2つの遺伝子座モデルで良いと言うのですから。


第三の問題点:著者がバカだと言う事です。彼らは,FBO仮説を信じているから,バカなのです。fraternal birth-order(FBO)あるいは,FBO効果とは,同性愛男性に年上の男の兄弟が多いと言う観察から生まれた仮説で,Blanchard Rらによって提唱されました。
http://morisitaazami.blog.fc2.com/blog-entry-88.html

有力な原因仮説は,母体免疫仮説で,母親は各々の男の子を妊娠出産するにつれ,男性抗原に感作され,抗男性抗体か,抗男性免疫効果細胞によって,男子の胎児を攻撃して,性指向の中枢を障害し同性愛を生むというものです。
最近,この仮説は,MTF-GIDにも拡張され,この場合は男性性自認の中枢を障害し,女性の性自認を生むと言うのです。


批判1.そもそも母体の胎児に対する応答は,調節され起こらないようになっている。起きたら,不妊,流産,不育症,妊娠高血圧症候群などをおこす。胎児は父親の遺伝子を半分持つから,男女に関わりなく,免疫応答は起きうる。


批判2.妊娠免疫が起きたら,何らかの身体疾患が起きる方が可能性があって,BBB(脳血管関門)に守られた中枢の抗原が感作されたり,攻撃されるのは考えにくい。もし,中枢神経特異的抗原が感作されたり,攻撃されたら,中枢神経全体の疾患が起きる事が考えられる。


批判3.中枢神経特異的抗原が感作されたり,攻撃されたとしても,胎児の性指向の中枢や,性自認の中枢だけが,障害され,残りの中枢神経が障害を受けず,身体が障害を受けないと言うのは都合が良すぎる仮説である。


批判4.胎児の中枢神経系は未発達で,男女の性別二型核はまだ形成されていないと言う報告があるけど,どうやって免疫システムが識別するのだろうか。
 

批判5.母体の免疫が男性特異的抗原を認識攻撃したとしたら,精巣,前立腺などの男性特異的組織や,精子を攻撃して,わざわざ到達困難な中枢神経を攻撃するのだろうか?
 

結論として,Blanchard Rはバカな仮説を立てて,それに追随する愚かな人々が居ます。


こんなものを,大真面目に信じるバカの論文は,割引きして批判的に読むべきです。竹内久美子はこれらの問題を指摘しなかったのでしょうか?



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